Japolatino

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海がきこえる
4



:

うん……

:

(モノロ-グ) ああいう子がえいがか……

松野:


ハワイ 3月 晝
年も明けて3月.待ちに待ったというよりも待たされた,修學旅行がやってきた.
男生徒C 杜崎!どうした?海へ行かんがか?
男生徒D 明日は高知じゃきの

:

なんや,朝から腹の調子が惡うてよ
男生徒C かわいそうやにゃあ,ほいじゃ
男生徒D じゃあ
そして,この因緣の修學旅行は,最後までぼくにることになった.

里伽子:

杜崎くん,お金貸してくれない?

:

金……?

:

どうしたがじゃ,金,使いすぎたがか?

里伽子:

うん,いえ,あのう……

里伽子:

あのね,持ってきた全財産,落しちゃったみたいなのよ

:

な……そりゃ大事じゃんか

:

センセに連絡したがか?トラベラ-ズチェッカやったら,すぐ連絡したらなんとか
なるらし
いぜよ

里伽子:

叱られるの,いやなのよ

:

何言うちゅうがちゃ.ちゃんとせにゃいかんぞ.金は大事だがぜよ

里伽子:

ふふ……
ごめんなさい.土佐辯のイントネ-ションて,ちょっと時代劇みたいね
ねえ,すわらない?
あたしも混亂してたのよ.ちゃんと說明するわね
お金はほとんど現金で持ってきてたの,トラベラ-ズチェックはめんどうでしょ?
だか
ら……

:

現金っち,ドルのか?

里伽子:

そう.ドルの現金.400ドルくらい.全然使わないうちに見當たらなくなったのよ

:

全部現金で持ってくるのがいかん.現金は2萬円以內ちゅうことやったろう
あとの3萬はトラベッラ-ズチェックにしろって,言われちょったろうが

里伽子:

そんなの誰も守ってないわよ!
なあに?まるで先生みたいなこと言うのね.杜崎くんて,そんな優等生だったの?
聞い
た話
と全然違うわ.がっかりよ

:

東京辯て,なんやケンカ賣りゆうみたいやな

里伽子:

え?なに,それ.あたし,ケンカなんか賣ってないわよ

:

うん.ぼくも時代劇の俳優じゃない

里伽子:

杜崎くんて,けっこう意志が惡いわね.ケンカ賣ってるなんて言われたの初めて
よ.わたい
のしゃべり方,そんなふうに聞こえる?

:

うん.みんなもそう思いゆうがぞ.なんちゃ-言うてこんのは,へんなこと言うた
ら,時代
劇みたいちゅうて笑われるきゃ

里伽子:

もうやめてよ
あたしが惡かったわ.別にバカにしたんじゃないのよ.でも,ドラマなんかでわざ
と地方の
言葉使うのあるでしょ.ああいうの,現實にはもうないと思ってたんだ
なのに高知に來たら,みんな平氣で ってるんだもの,びっくりしちゃった.で
も,時代
劇って言ったの,今が初めてよ.そう思ってたけど誰のも話してないわ

:

うん.そのほうがえい

里伽子:

うん……言葉ってやっぱり大切だわ.耳になじむまで,相手が何言ってんかわか
んないんだ
もん
何度も聞き返したりしたら,すっかり嫌われちゃったみたい

:

嫌われた,誰に?

里伽子:

クラスの人.特に男子が,ぜんぜん口もきいてくれないの
クラス委員の

松野:

くんは別だけど.あの人,親切ね

:

うん.

松野:

はええやつじゃ.武藤は,ぼくのこと,

松野:

に聞いたん?

里伽子:

うん.冬休みに,帶屋町のお料理屋さんで,エプロンして,?いているの見かけた
のよ.一
緖にいた

松野:

くんが,あいつはよく?くなって言ってたわ.それでいろんなこと聞
いんたの
よ.中等部の頃の反抗ぶりとか,ふたりきりの說明會とか……

:

そんなことまで話したん

里伽子:

ねえ!夏の冬もバイトして,お小遣いたくさん持ってきてるんでしょ?

:

いくらいるが

里伽子:

いくら貸せそう?

:

円で6萬円と,ドルじゃと400ドルばぁかな.まだ全然使っちゃあせんし,300ドル
ばぁ貸し
てもえい

里伽子:

ほんと!?じゃあ6萬円のほう,貸してくれない?

:

な……

:

ここで待っちよれ

:

6萬やと!

里伽子:

ごくろうさまでした.杜崎さま.

:

金,どうする?ここで渡すがか?

里伽子:

杜崎くんって用心深いのね.じゃ,そこの椅子に座ってよ

里伽子:

(OFF) お金,このハンカチにくるんで,ハンカチごとあたしのちょうだい

:

なんや,ヤバイ取引きやりゆうみたいやなあ

里伽子:

日本に歸ったら返すけど,すぐってわけにはいかないと思うの.アテはあるの
よ.でも,す
ぐじゃないの

:

まあ,いつでもえいちゃ

里伽子:

(OFF) このこと,誰にも言わないでくれる?

:

ん,けんど,なんで?

里伽子:

ママに知れたら,叱られるからよ.

:

ママ……

:

なんぜよ,あいつは

松野:

よう

:

あいつ……ぼくのこと知っちよるき,たまけたぜ……おまえら,仲良さそうやん
か,デ-ト
したんやてな?

松野:

デ-トじゃないよ.冬休みに帶屋町でばったり會(お)うたき.ダメモとで映畵
誘ったらすん
なりとOKで,こっちのほうがびっくりしたぞ.何話してえいかわからんし,おた
おたしよっ
たら……
おまえがバイトしよう店の前通ったき,ついおまえの話をネタにさせてもろうた.
助かった

:

そのネタのおかげで,いま借金申し翔まれたんぞ

松野:

借金て,武藤が,おまえに?

:

うん.小遣い落したがやと.ほんで,ぼくが通りかかったき,バイトでがっちり稼
いでたの
思い出したがじゃろうの

松野:

へえ,小遣い落したがか,そらむごいね.ふう―― ん
なあ,街でもぶらつかんか?

:

えいにゃあ

松野:

ほんなら,水着,部屋に置いてくるき,ちょっと待っちょってくれや

:

ふん……

:

ん……おう

里伽子:

誰にも言わないでって言ったのに,もう

松野:

くんにしゃべっちゃったのね!

:

え?

松野:

がなんて?

里伽子:

お小遣い餘ってるから貸そうかって言ってくれたのよ

:

へえ,やっぱりあいつ,ええヤツやろ?

里伽子:

2萬円借りたけど……もう他の人には言わないでね!ほんとに困るわ!杜崎くん
て,男のくせ
にけっこうお りなのね

:

なんぜよあいつ,どういう育ち方しちょるんじゃ
翌日,ぼくたちは高知に歸り,須田というやつが隱し撮りした

里伽子:

の無防備な寫眞をぼくは
腹いせのつもりで買った.
それで

里伽子:

への反感は忘れたつもりだったのに―
高3のクラス替えで,ぼくと

里伽子:

は同じクラスになってしまった.
學校 4月 晝

里伽子:

裕美,お辯當
小浜 うん

里伽子:

にも友だちができた.
同じクラスになった小浜裕美という,どちらかといえば目立たない娘で―
杜崎家 四月末 朝
まあ,それはいいのだけれど,ゴ-ルデンウィ-クになっても

里伽子:

はあのお金を返さなかっ
た.
まるで忘れてしまったみたいに……

:

の母(OFF)

:

,電話ぞね.小浜さんゆうコから

:

よう,小浜か?公衆電話なんか,これ
小浜(OFF) 杜崎ィ,あたしどうしたらええか,もうわからんなった

:

どうしたん
高知空港
小浜 今日,

里伽子:

とね,一緖に大阪のコンサ-ト行って,むこうで2泊してくることに
なっちょっ
たが.それやに空港へ來たら,

里伽子:

ゆうたら本當は東京に行くって言うが.最初
からその
つもりやったがやと
小浜 今,あたしトイレに行くゆうて,電話しゆうがやき

:

(OFF) なんだ,それ
小浜 2泊して歸ってくるのは同じやき,えいやんかって,

里伽子:

は言うけんど
小浜(OFF) もう

里伽子:

,東京行きの切符も2枚買うてあるゆうし.あたし,母さんに噓つく
ことになるも

:

落ち着けや.なにも一緖に行くことないやろ.行かんて言うて武藤ひとりほっ
ちょったらえ
えんじゃ
小浜(OFF) けんど,

里伽子:

のお母さんも,あたしが一緖やきOKしたがやと.だから絶對一
緖に行ってく
れて.ねえ,どうしたらええ?

:

どうしたらええっち

:

ちょっと待ちや.どうしてぼくに聞くが,そんなことを
小浜 だって

里伽子:

.飛行機代とか,杜崎にお金借りてきたって言うやんか.そんなに
親しいんな
ら,

里伽子:

說得できるろう? ねえ,杜崎,空港へ來てェ.あたしらの乘る便,11
時半やき,
まだ1時間半もあるき
小浜(OFF) お願いね.絶對來てよ

:

あのカネか……!

:

(モノロ-グ) ハワイでカネを落したき,かしてくれ言うちょったんは,みんなウソじゃ.今
日のための
準備じゃったんか.まっこと,人をばかにしおって,ええかげんにせい,ちゅん
じゃ!
小浜 杜崎!!來てくれたが

:

武藤は?
小浜 今,トイレ
小浜 今朝から具合がようないがやと.このまま體調くずして,旅行取りやめにしてく
れたら助か
るがやけんど

:

とにかく,武藤のやることはムチャクチャじゃ.おまえも友達なら,說敎のひとつ
やふた
つ,ピシッと決めてみいや
小浜 でも

里伽子:

どうしてもパパに會いたい言うし,かわいそうやなとか思うて……

:

パパッて,おやじさんのことか!?

里伽子:

なによ,どうしてこんなところにいるの?
裕美が連絡したの?
小浜 ねえ

里伽子:

,こんなウソついて行くのやめよう.ちゃんとお母さんに言うてから

里伽子:

ママは絶對に行かせてくれないわよ.だから,ずっと前から準備してたの

:

まあ待ちや.じゃあ,こうせ-や.小浜,家に電話してな,空港でえらい氣分が惡
うなった
き,もどるって言え.
小浜 え,けんど……

:

ほんで,武藤もえらい心配しちょるけんど,コンサ-トチケットもったいないきに
ひとりで
行ってもらうことにしたちょうて

:

(OFF) 小浜の親も,なんやかんや言うたち小浜が心配なだけじゃき,武藤のことまでイ
ロイロ言わ
んろう
小浜 そうよね.うちのお母さん,

里伽子:

のお母さんのことしらんし.絶對,告げ口な
んかせんき

里伽子:

いいわよ,それで
小浜 電話してくる

:

小浜もお孃さん育ちじゃの.發想轉換して,東京で遊んでこうちゅう氣にならんと
こがエラ
イちゃ

:

ふう……おまえ,體の具合ようないんやて?

里伽子:

あたし,生理の初日が重いの.貧血おこして寢翔むこともあるのよ

:

寢翔むんか

里伽子:

(OFF) 男の人はわからないでしょ,どうせ

:

……おまえ,どうしても行くがか

里伽子:

(OFF) 借りたお金はパパからもらうわよ.ちゃんと返すから心配ないでよね.

:

(OFF) ……おまえ
ひとりで行くんが不安じゃったら,ぼくも一緖にいっちゃろか?

里伽子:

ほんと? ほんとうにそうしてくれるの?
機內

:

なあ,おい

里伽子:

ん?

:

(OFF) おまえが行くの,おやじさん,ちゃんと知っちゅうがやろ.羽田に迎えに來ちゅ
うんか?

里伽子:

來てないわよ,きっと

:

(OFF) おやじさん,ぼくの泊まるとこ,紹介してくれるろうか

里伽子:

もちろんよ,賴んであげるわ

:

 

 

 

 

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