Japolatino

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耳をすませば
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雩:

そういうあなたは立ち直り早いわねェ...

 

夕子 :

ゆうべ, よそのクラスの男の子と步いてたって?

 

雩:

エエッ... だれがそんなこといったの?

 

夕子 :

ウワサよ... 戀人同士みたいだったって...

 

雩:

そんなんじゃないよ...

 

杉村 :

原田... あのことだけどオレの方から斷っとく... ごめんな...

 

夕子 :

ううん... わたしこそごめんね...

 

杉村 :

いいよ...

 

クラスメイト :

オイ! ゆうべのサスケみたか? すげえんだ... オレ感動した...

 

(ガハハハハハ......)

 

 

 

先生 :

この公式は中間に出すからね... よく覺えておきなさい!

 

クラスメイト :

エエ~~~~~~ッ!!!!!

 

先生 :

おわります!!

 

 

 

聖司 :

あのさ... 月島いるかな?

 

クラスメイト :

天澤じゃん...なに?

 

聖司 :

月島ってこのクラスだろ?

 

クラスメイト :

月島? ああ...いるよ! オ-イ! 月島! 面會だぞ-!!! お.と.こ.の-
ほらっ...あそこだよ...

 

雩:

聖司君...!!!

 

聖司 :

月島...ちょっといいかな...

 

雩:

...ハイッ!

 

クラスメイト :

ワ-イ! 月島に男がいたぞ-!

 

(キャ-..ワ-..ピ-..キャ-...カン-カン-...オ-...ピ-ピ-...オ-ト-コ-...オ-ト-コ-...)

 

雩:

達う!!! そんなんじゃないわよっ!!!

 

(キャ-..ワ-..カン-カン-...オ-...)

 

雩:

なに? いったい...

 

聖司 :

いけることになったんだ! イタリアへ...

 

雩:

エッ!? あっちいこ!

 

(ザワ...ザワ...ザワ...)

 

聖司 :

どこへいくんだよ...

 

雩:

屋上!

 

(ザアアアァァァァ....)

 

雩:

アア...

 

聖司 :

...すげえな...

 

雩:

だって... あんなにたくさん人がいるところで呼び出すんだもん...

 

聖司 :

わるい... いちばん先にしずくに敎えたかったんだ...

 

雩:

ご, 誤解
されるぐらい かまわないけど...

 

聖司 :

おやじがやっと折れたんだよ... ただし條件つきげけどね...

 

雩:

エ...なあに...?

 

聖司 :

じいちゃんの友達が紹介してくれたアトリエで2ケ月見習いをやるんだよ...

 

雩:

みならい?

 

聖司 :

その親方はとってもきびしい人なんで 見こみがあるかどうか見てくれるって...
それにおれ自身ががまんできるかどうかも判るだろうってさ...
だめだったら, おとなしく進學しろっていうんだ...
おれ... そういうの好きじゃないよ... 逃げ道つくっとくみたいで...
でも... チャンスだから行ってくる...

 

雩:

いつ...いつ行くの?

 

聖司 :

パスポ-トがとれしだい... 學校とは今日おやじと話をつけるんだ...

 

雩:

じゃあ...すぐなんだ... よかったね... 夢がかなって...

 

聖司 :

ああ... とにかくいっしょうけんめいにやってみる...

 

聖司/雩 :

あの.../お...

 

聖司 :

...! 雨あがるぞ...

 

雩:

ほんとだ... ワア... あそこみて... 虹が出るかもしれない...

 

聖司 :

うん...

 

雩:

クレモ-ナってどんな町かな... すてきな町だといいね...

 

聖司 :

うん... 古い町だって... バイオリンづくりの職人がたくさん住んでいるんだ...

 

雩:

すごいなあ... グングン夢に向かって進んでいって...
わたしなんかバカみたい... 聖司君と同じ高校へ行けたらイイナ... なんて...
ハハハ... てんでレベル低くて いやんなっちゃうね...

 

クラスメイト :

(いたか?... シ-ッ... いるいる... しずくかわいいのよ... ほんと... いたぞ...)

 

聖司 :

おれ, 圖書カ-ドですっと前から... しずくに氣がついてたんだ...
圖書館で何度もすれちがったの, 知らないだろ...
となりの席にすわったこともあるんだぞ...

 

雩:

エエ-ッ!

 

聖司 :

おれ, お前より先に圖書カ-ドに名前をかくため... すいぶん本讀んだんだからな...

 

雩:

.....!

 

聖司 :

おれ........ イタリアへ行ったら... お前のあの歌うたってがんばるからな...

 

雩:

...わ...わたしも...

 

クラスメイト :

おすな! バカ... イテテ... キャッ...
(ガッシャン-)

 

クラスメイト :

(ワァ-!...キャ-!...イテ~~~... ギャハハ... バカ... どけっ...)

 

雩:

コ-ラ-ッ!!!

 

クラスメイト :

月島がおこった-!!

 

(ドャ...ドャ...ドャ...ドャ...)

 

クラスメイト :

コワイゾ-! キャ-... うわ, きた!!

 

(ドャ...ドャ...ドャ...ドャ...)

 

 

 

姉:

ハイ...

 

父:

ああ... すまん...

 

雩:

ごちそうさま...

 

母:

しずく... もう食べないの?

 

雩:

夕子とまちあわせ...

 

母:

驛の方へ行くなら牛乳買ってきて...

 

雩:

エ~~~~~ッ...

 

姉:

しずく... ガブ飮みしたんでしょ! ... このごろてんでたるんでるんだから...
あの子...

 

 

 

雩:

ごめ-ん...さぼらした?

 

夕子 :

いいよ...

 

雩:

もうアタマグジャグジャ...

 

夕子の母:

あら... しずくちゃん... いらしゃい...

 

雩:

こんばんわ...

 

夕子の父:

おかえり...

 

雩:

失禮します...

 

夕子の母:

お茶入れるからとりに來なさいね...

 

夕子 :

ハ-イ... お父さんとケンカしてるの... 口きいてやらないんだ...

 

夕子 :

男の子ってすごいなあ...

 

雩:

2ケ月で歸ってきても卒業したらすぐ戾って... 10年位はむこうで修業するんだっ
て...

 

夕子 :

ほとんど生き別れじゃない... でもさ... こういうのこそ赤い絲っていうんじゃな
い? すてきだよ!

 

雩:

相手がカッコよすぎるよ... 同じ本を讀んでたのに 片っぱはそれだけでさ...
片っぱは進路をとっくに決めててドンドン進んでっちゃうんだもの...

 

夕子 :

そうか... そうよね... 絹ちゃん一年のとき同じクラスだったじゃない...
天澤君てちょっととっつきにくいけど... ハンサムだし勉强もできるっていってた
わ...

 

雩:

どうせですよ-... そう... あからさまにいわないでよ...ますますおちこんじゃう...

 

夕子 :

なんで? 好きならいいじゃない, 告白されたんでしょ...

 

雩:

それも自信なくなった...

 

夕子 :

フ-ッ... わたし判んない...
わたしだったら每日手紙かいて, はげましたりはげまされたりするけどな...

 

雩:

自分よりずっとがんばってるやつに がんばれ-なんていえないもん...

 

夕子 :

そうかなあ... しずくのきいてるとさ, 相手とどうなりたいのか判らないよ...
進路が決まってないと戀もできないわけ? しずくだって才能あるじゃない...
カントリ-ロ-ドの譯詞なんか, 後輩達, 大よろこびしてるもの...
わたしと違って自分のこと はっきりいえるしさ...

 

雩:

オレくらいの奴 たくさんいるよ...

 

夕子 :

エッ?

 

雩:

ううん...あいつがいったの. あいつは自分の才能をたしかめにいくの...
だったらあたしもためしてみる...
決めた! あたし物語を書く!
書きたいものがあるの...あいつがやるならあたしもやってみる...

 

夕子 :

でも... じき中間だよ...

 

雩:

いいの... 夕子ありがとう, なんだか力が湧いてきた...

 

夕子 :

歸る?

 

雩:

うん...

 

 

 

雩:

おじゃましました...

 

夕子の母:

お母さんによろしくね...

 

 

 

雩:

ハイ...

 

雩:

夕子もがんばってね...

 

夕子 :

うん...

 

雩:

夕子のよさ, きっと杉村にも判るよ... さよなら...

 

夕子 :

さよなら...

 

雩:

そうかぁ... 簡單なことなんだ... あたしもやればいいんだ...

 

雩:

.....! ム-ン...

 

女:

ムタ- ムタ-... お母さ-ん... ムタまたいっちゃったよ-...ムタ-...

 

雩:

ムタだって...
- つづく -

 

 

 

地球屋主人 :

ホォ-...バロンを主人公に...

 

雩:

おゆるしをいただけますか?
聖司君からこのお人形がおじいさんの寶物だとうかがったものですから...

 

地球屋主人 :

ハハハ...それでわざわざか...いいですとも...ただし條件がひとつある...

 

雩:

...? ハイ...

 

地球屋主人 :

ぼくを...しずくさんの物語の最初の讀者にしてくれること...

 

雩:

あ...あの...

 

地球屋主人 :

どうですかな?

 

雩:

やっぱり見せなきゃだめですか?
だって...ちゃんと書けるかどうか...まだ...判らないから...

 

地球屋主人 :

ハハハハ...それは私達職人も同じです...
はじめから完ペキなんか期待してはいけない...
そうだ...いいものを見せてあげようかな...
コレコレ...みてごらん...
雲母片巖という石なんだがね...その割れ目をのぞいてごらん...
そう...そうして...

 

雩:

ワァ-ッ! きれい...

 

地球屋主人 :

綠柱石といってね...エメラルドの原石がふくまれてるんだよ...

 

雩:

エメラルドって寶石の?

 

地球屋主人 :

そう...しずくさんも聖司もその石みたいなものだ...
まだ磨いてない自然のままの石...
わたしはそのままでも とても好きだがね...
しかし...バイオリンを作ったり, 物語を書くというのはちがうんだ...
自分の中に原石をみつけて時間をかけて磨くことなんだよ...
手間のかかる仕事だ...その石の一番大きな原石があるでしょう...

 

雩:

ハイ...

 

地球屋主人 :

實はそれは磨くとかえってつまらないものになってしまう石なんだ...
もっと奧の小さいものの方が純度が高い...
いや...外から見えない所にもっといい原石があるかもしれないんだ...
イヤ-ハハハ...イカン...イカン...
歲をとると說敎くさくていかんな...

 

 

 

 

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