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里伽子:
あのね,パパに會ったら,あたし話すつもりでいるの.
里伽子:
パパと一緖に暮したい,東京に戾りたいって……
アナウンス みなさま,當機はこれより羽田空港へ着陸いたします.
里伽子:
のあとを追って東京を步きながら,ぼくは,またも
里伽子:
にやられたと思っていた.け
れど,あのままひとりで東京へ行かせることは,できなかったんだ.
成城 午後
里伽子:
(OFF) ほんとは南口のほうが櫻竝木もあってすごくいいの.こっちは成城の下町なの
拓:
(OFF) へえ
里伽子:
パパの兩親の家が,こっちのほうにあったの.昔はここいらも畑だったって
拓:
ぼ-
里伽子:
そこに業者がマンションを建てるっていうんで,一番いい部屋をもらったの
拓:
ふ-ん
里伽子:
4人家族でも廣かったから,パパひとりで淋しがってると思うんだ
拓:
(OFF) ほんじゃあ,武藤がいったら喜ぶじゃろう
里伽子:
久しぶりだわあ
愛人(OFF) どなたですか
里伽子:
あのう……武藤さんですか?
愛人(OFF) そうですけど……
里伽子:
あのう……,パパはいますか
里伽子:
の父(OFF) …
里伽子:
か.降りてくから,ちょっとロビ-で待ってなさい
里伽子:
の父 よう.連絡なしに來るからびっくりしたよ.ひとりで來たのか?
里伽子:
高知のボ-イフレンドよ.ゴ-ルデンウィ-クだから一緖に遊びに來たの
里伽子:
の父 そうか.
里伽子:
が世話になってるね.どこかでお茶でも飮もうか
里伽子:
家も見たいわ.あたしの部屋,どうなってるの?
里伽子:
の父 じゃ,あがろうか.君……
里伽子:
の父(OFF) 惡いけど,ここでちょっと待っていてくれないか
拓:
はあ……
ふう……
里伽子:
の父 杜崎くん.
里伽子:
のわがままにつき合ってくれて惡かったね.こっちの宿決めてな
いって聞
いたんで,今連絡してのホテル,取っておいたよ
それと,
里伽子:
がお金を借りてたそうだね.どうもありがとう
あいつ,かわいそうだな,と,ぼくは心から思った.
ホテルの部屋 夜7時頃
拓:
(OFF) あ,もしもしお母さん?
拓:
の母(OFF) ああ
拓:
? そろそろ夕飯にするき,早よう歸って來なさい
拓:
いや,ちょっとわけかあって歸れんようなった
拓:
の母(OFF) ほんなら先に食べゆうき,あまり遲うならんぞね
拓:
今ぼく東京におるが
拓:
の母(OFF) 東京? 何言いゆう.朝おったやんか
拓:
けんど,飛行機でバ-ッと東京まで…
拓:
の母(OFF) ええ-?
拓:
ある人のつきそうじゃき
拓:
の母(OFF) ある人っち誰ぞね!?
拓:
とにかくあさってもどるき
拓:
の母(OFF) ちゃんと言うてみなさい!
ドン ドン!
拓:
あ! 歸ってから話すき.ほなら切るで!
拓:
の母(OFF) ちょっと
拓:
!?
拓:
武藤……
拓:
どうしたがで
里伽子:
ここに泊まるわ.請求書はパパに行くんだから,あたしにも權利あるでしょ
拓:
おい……
これはドラマより,まだひどい……とぼくは思った.
拓:
武藤,ビ-ル飮むか
飮めんがか? ぼくら學校に內緖で飮んだりするがぞ
里伽子:
コ-クハイ,作って
學園祭のときなんか,友達の家で飮んでた……
里伽子:
パパはね,この連休にオトモダチと旅行に行くんだって
拓:
あ,そうか.連休やもなァ.ははは
里伽子:
あたしの部屋もね.すっかり模樣變えされてたの.壁紙なんか,濃いグリ-ンな
のよ
あたし,グリ-ン大嫌い!
拓:
うん,そうや.グリ-ンはようない
里伽子:
お鍋なんか全部ホ-ロ-よ!! ばっかみたい.今どきホ-ロ-なんかはやらないわ
よ
あたしね,杜崎くん.ママたちがもめたとき,ママがバカだと思ってたの
見すごしてればいいのにワ-ワ-騷ぐからパパも意地になっちゃって,離婚みたい
なカッコ
惡いことになっちゃって
里伽子:
(OFF) あたしや弟も友だちと別れて轉校しなきゃならなくなって,ひどいって…
拓:
うん……
里伽子:
あたし,パパの味方のつもりだった
でも,パパはあたしの味方じゃなかったの
拓:
(OFF) 味方って,おまえ……
里伽子:
あたしって,かわいそうね……
拓:
おまえもかわいそうじゃけんど,歸ったらお母さんに優しゅうにしちゃれよ.母親
への抗議
みたいに,わざわざ下宿までしてからに
里伽子:
下宿したのは,ママの實家に三人も居候するのは惡いと思ったからよ.意地はっ
てわけじゃ
ないわ
拓:
(OFF) なら,えいけんど
里伽子:
杜崎くんに關係ないわ
拓:
ふう……
拓:
(OFF) いて……
拓:
(OFF) ぼくだってごっつうかわいそうやんか
こん こん!
里伽子:
(OFF) 杜崎くん!
拓:
(OFF) ん∼∼
里伽子:
(OFF) 早く起きて
里伽子:
ようやく起きたのね.トイレも洗面所も使えなくて困っちゃった.一階のトイレ
まで行った
のよ
拓:
わりィ……
里伽子:
(OFF) ねえ,30分くらい部屋をでててくれない? あたし,ちょっと人と會うから,準
備したいの
拓:
親父さんか?
里伽子:
こっちの高校の友達よ.さっき電話したから,懷しがって,すぐホテルまで會い
に來てくれ
るって
拓:
へえ,よかったじゃんか
里伽子:
(OFF) 急いでしたくしなきゃ,シャワ-使いたいの.早く出てってね
大學は東京にしようとぼくが決めたのは,このときだったかもしれない.
里伽子:
がなんとか氣を持ち直そうとしているのが感じられて,ほっとしていたからだろうか.
里伽子:
ちょうどよかった.今,友だちが着いてロビ-から電話があったとこなの
拓:
そうか
里伽子:
じゃ,行って來ます.
里伽子:
あ.鍵どうしよう.杜崎くん,外出する?
拓:
(OFF) 部屋で寢るき,かまわんちゃ
里伽子:
ほんと? 惡いな
拓:
氣にせんと,樂しんで來いや
里伽子:
うん
リリリリ-ン リリリリ-ン
拓:
(OFF) はい……
里伽子:
(OFF) 杜崎くん.惡いけど一階のティ-ル-ムに來てくれない?
拓:
どうしたが.財布忘れたがか
里伽子:
(OFF) いいから來て.助けると思って,すぐに來て
拓:
さあて今度は何やろ……
里伽子:
杜崎くん,こっち
里伽子:
(OFF) こっち,杜崎くんていうの
里伽子:
心配して東京までついて來てくれたの杜崎くん,こっち,元クラスメ-トの岡田
くん
岡田 こんちは
岡田
里伽子:
,もうボ-イフレンドができたのかあ.なんかショックだなあ
里伽子:
人のこと言えるの? あたしがいなくなって,すぐにリョ-コとカップリングする
とは思わな
かった
里伽子:
(OFF) なんだかうらぎられた氣分よ,もう
岡田(OFF) え-? でも
里伽子:
のほうが美人だよ.リョ-コもそう言ってる.
里伽子:
の
あと
じゃ,かすん
じゃうってさ
里伽子:
(OFF) ねえ聞いてよ杜崎くん
里伽子:
ショックだと思わない? 岡田くんとは1年もつき合ったのに,別れて2か月でも
う彼女がで
きたの.それがあたしの友だちのコよ
拓:
え? まあそんなもんだろ
里伽子:
ね,この人もかなりク-ルよね
岡田 リョ-コにも連絡つけてあるんだけど,どうする?
里伽子:
もカレ誘って,一緖に
映畵行かな
いか? ダブルデ-トでさ,うん……
里伽子:
行きたいんだけど──お晝にパパが來てごちそうしてくれることになってるの,
ね!?
岡田 來るのがわかってから,ちゃんと計畵たてたのに,殘念だなあ.だけど
里伽子:
の
お母さん,
ちょっとひどいよなあ
岡田(OFF) どうせこっちで受驗するんだから,
里伽子:
だけでも置いてってくれたらよかった
のにさ
むりやりあっちに連れてくんだもんなあ……子供のこと,考えてないよ
拓:
何が子供のことを考えろじゃ.中學生じゃないろうが
里伽子:
(OFF) な,なによ,杜崎くん
拓:
まったく,くだらんちゃ.おまえもそっちの男も
岡田 彼,ぼくのことでやきもちやいてんのかな.惡かったなあ
ぼくはがっかりしていた.あの,いつも堂としていた
里伽子:
が東京では,つまらない見榮を
はってあんなバカ男とニコニコ笑ってるだけのコだったなんて.
トントン
拓:
(OFF) 武藤……
里伽子:
岡田くんがね,ぼくは氣にしてないからって,傳えてくれって
拓:
……!
里伽子:
ほんとにあの人ってバカね.つき合ってる頃はよく氣のつく優しい人だと思って
たんだけど
ふふっ…….最初は見榮はって杜崎くん呼んだんだけど,杜崎くんが歸ってふたり
きりに
なったとたん,バカバカしくなっちゃった.ほんとにくだらないわよ.彼も,あた
しも
拓:
(OFF) まあな,あいつに親しいのができたき,ショックながはわかる
里伽子:
わかってないわね,杜崎くん
里伽子:
(OFF) あたしがショックなのはね,岡田くんがもう全然他人みたいな感じだったこ
里伽子:
あの人,自分のことしからないの.高知はどうだ,なんて聞きもしないの.でも
もとから
ああいう人だったのよ.ようするにあたしが氣づかなかってだけ
拓:
へえ……
里伽子:
今夜はおばさんとこに泊まるわ.考えたらふたりでひとつの部屋に泊まるのもヘ
ンだ
し…….あした空港のカウンタ-で會いましょ
里伽子:
ひどい東京旅行になっちゃったわね
里伽子:
は,まるで30分で一氣に大人になったみたいだった.
校內 5月 晝
里伽子:
(OFF) え? 裕美,どこで買ったの
小浜
里伽子:
も買うが?
里伽子:
だって980円なら安いもん!!
連休がおわって學校が始まると─
─
里伽子:
は何事もなかったようにぼくを無視し─
今までどおり小浜裕美とだけは仲がよかった.
淸水 誤解せんと聞いてや
あんたのこと心配しゆうわけじゃないけんど,このままじゃとひとりぼっちになっ
てしまう
きね.まあ,わけはあるろうけんど,もうちっと……
里伽子:
放っといて!
7月 晝
拓:
(OFF) おまえ,期末はどうじゃった?
松野:
全然いかんかった.夏休み,大阪の豫備校行ってくる
拓:
ふ-ん,合宿か
松野:
氣分もかわってえいろう
松野:
なあ
拓:
あ?
松野:
變なこと聞くけど,怒りなよ.おまえ,連休のとき,武藤と旅行に行ったろう
拓:
ああ.行ったや.……どうして知っちゅうんじゃ?
松野:
どうしてち……けっこうになっちょったがぞ.おまえ,氣がつかんかったがか?
拓:
(OFF) 氣がつかんかった
松野:
おまえらしいな
泊りがけの旅行やゆうき,面とむこうてひやかすがはヤバイやんか.ウラでひそひ
そ言い
よったがぞ
拓:
あのな,どういう しなっちょったか知らんけど武藤は父親に會いに行ったばあの
ことじゃ
松野:
それは聞いた
拓:
聞いたって,誰に.小浜にか
松野:
小浜?
松野:
なんで小浜な.武藤本人やき
拓:
え?
松野:
たまたま圖書館で會うて,歸りが一緖になったき,聞いてみたら
橋の上 5月 午後
里伽子:
またその話なの!? たしかに杜崎くんと東京に行って同じホテルに一泊したわよ.
それがあな
たにどういう關係があるの!?
松野:
……おれ……
武藤のこと,好きやき……
里伽子:
……あたし……
高知もきらいだし,高知辯る男も大きらい! まるで戀愛の對象にならないし,
そんなこと
言われると,ゾッとするわ!
拓:
(OFF) ゾッとするちゅ言うたんか
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