Japolatino

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海がきこえる
5



 

里伽子:

あのね,パパに會ったら,あたし話すつもりでいるの.

里伽子:

パパと一緖に暮したい,東京に戾りたいって……
アナウンス みなさま,當機はこれより羽田空港へ着陸いたします.

里伽子:

のあとを追って東京を步きながら,ぼくは,またも

里伽子:

にやられたと思っていた.け
れど,あのままひとりで東京へ行かせることは,できなかったんだ.
成城 午後

里伽子:

(OFF) ほんとは南口のほうが櫻竝木もあってすごくいいの.こっちは成城の下町なの

:

(OFF) へえ

里伽子:

パパの兩親の家が,こっちのほうにあったの.昔はここいらも畑だったって

:

ぼ-

里伽子:

そこに業者がマンションを建てるっていうんで,一番いい部屋をもらったの

:

ふ-ん

里伽子:

4人家族でも廣かったから,パパひとりで淋しがってると思うんだ

:

(OFF) ほんじゃあ,武藤がいったら喜ぶじゃろう

里伽子:

久しぶりだわあ
愛人(OFF) どなたですか

里伽子:

あのう……武藤さんですか?
愛人(OFF) そうですけど……

里伽子:

あのう……,パパはいますか

里伽子:

の父(OFF) …

里伽子:

か.降りてくから,ちょっとロビ-で待ってなさい

里伽子:

の父 よう.連絡なしに來るからびっくりしたよ.ひとりで來たのか?

里伽子:

高知のボ-イフレンドよ.ゴ-ルデンウィ-クだから一緖に遊びに來たの

里伽子:

の父 そうか.

里伽子:

が世話になってるね.どこかでお茶でも飮もうか

里伽子:

家も見たいわ.あたしの部屋,どうなってるの?

里伽子:

の父 じゃ,あがろうか.君……

里伽子:

の父(OFF) 惡いけど,ここでちょっと待っていてくれないか

:

はあ……
ふう……

里伽子:

の父 杜崎くん.

里伽子:

のわがままにつき合ってくれて惡かったね.こっちの宿決めてな
いって聞
いたんで,今連絡してのホテル,取っておいたよ
それと,

里伽子:

がお金を借りてたそうだね.どうもありがとう
あいつ,かわいそうだな,と,ぼくは心から思った.
ホテルの部屋 夜7時頃

:

(OFF) あ,もしもしお母さん?

:

の母(OFF) ああ

:

? そろそろ夕飯にするき,早よう歸って來なさい

:

いや,ちょっとわけかあって歸れんようなった

:

の母(OFF) ほんなら先に食べゆうき,あまり遲うならんぞね

:

今ぼく東京におるが

:

の母(OFF) 東京? 何言いゆう.朝おったやんか

:

けんど,飛行機でバ-ッと東京まで…

:

の母(OFF) ええ-?

:

ある人のつきそうじゃき

:

の母(OFF) ある人っち誰ぞね!?

:

とにかくあさってもどるき

:

の母(OFF) ちゃんと言うてみなさい!
ドン ドン!

:

あ! 歸ってから話すき.ほなら切るで!

:

の母(OFF) ちょっと

:

!?

:

武藤……

:

どうしたがで

里伽子:

ここに泊まるわ.請求書はパパに行くんだから,あたしにも權利あるでしょ

:

おい……
これはドラマより,まだひどい……とぼくは思った.

:

武藤,ビ-ル飮むか
飮めんがか? ぼくら學校に內緖で飮んだりするがぞ

里伽子:

コ-クハイ,作って
學園祭のときなんか,友達の家で飮んでた……

里伽子:

パパはね,この連休にオトモダチと旅行に行くんだって

:

あ,そうか.連休やもなァ.ははは

里伽子:

あたしの部屋もね.すっかり模樣變えされてたの.壁紙なんか,濃いグリ-ンな
のよ
あたし,グリ-ン大嫌い!

:

うん,そうや.グリ-ンはようない

里伽子:

お鍋なんか全部ホ-ロ-よ!! ばっかみたい.今どきホ-ロ-なんかはやらないわ

あたしね,杜崎くん.ママたちがもめたとき,ママがバカだと思ってたの
見すごしてればいいのにワ-ワ-騷ぐからパパも意地になっちゃって,離婚みたい
なカッコ
惡いことになっちゃって

里伽子:

(OFF) あたしや弟も友だちと別れて轉校しなきゃならなくなって,ひどいって…

:

うん……

里伽子:

あたし,パパの味方のつもりだった
でも,パパはあたしの味方じゃなかったの

:

(OFF) 味方って,おまえ……

里伽子:

あたしって,かわいそうね……

:

おまえもかわいそうじゃけんど,歸ったらお母さんに優しゅうにしちゃれよ.母親
への抗議
みたいに,わざわざ下宿までしてからに

里伽子:

下宿したのは,ママの實家に三人も居候するのは惡いと思ったからよ.意地はっ
てわけじゃ
ないわ

:

(OFF) なら,えいけんど

里伽子:

杜崎くんに關係ないわ

:

ふう……

:

(OFF) いて……

:

(OFF) ぼくだってごっつうかわいそうやんか
こん こん!

里伽子:

(OFF) 杜崎くん!

:

(OFF) ん∼∼

里伽子:

(OFF) 早く起きて

里伽子:

ようやく起きたのね.トイレも洗面所も使えなくて困っちゃった.一階のトイレ
まで行った
のよ

:

わりィ……

里伽子:

(OFF) ねえ,30分くらい部屋をでててくれない? あたし,ちょっと人と會うから,準
備したいの

:

親父さんか?

里伽子:

こっちの高校の友達よ.さっき電話したから,懷しがって,すぐホテルまで會い
に來てくれ
るって

:

へえ,よかったじゃんか

里伽子:

(OFF) 急いでしたくしなきゃ,シャワ-使いたいの.早く出てってね

大學は東京にしようとぼくが決めたのは,このときだったかもしれない.

里伽子:

がなんとか氣を持ち直そうとしているのが感じられて,ほっとしていたからだろうか.

里伽子:

ちょうどよかった.今,友だちが着いてロビ-から電話があったとこなの

:

そうか

里伽子:

じゃ,行って來ます.

里伽子:

あ.鍵どうしよう.杜崎くん,外出する?

:

(OFF) 部屋で寢るき,かまわんちゃ

里伽子:

ほんと? 惡いな

:

氣にせんと,樂しんで來いや

里伽子:

うん

リリリリ-ン リリリリ-ン

:

(OFF) はい……

里伽子:

(OFF) 杜崎くん.惡いけど一階のティ-ル-ムに來てくれない?

:

どうしたが.財布忘れたがか

里伽子:

(OFF) いいから來て.助けると思って,すぐに來て

:

さあて今度は何やろ……

里伽子:

杜崎くん,こっち

里伽子:

(OFF) こっち,杜崎くんていうの

里伽子:

心配して東京までついて來てくれたの杜崎くん,こっち,元クラスメ-トの岡田
くん
岡田 こんちは
岡田

里伽子:

,もうボ-イフレンドができたのかあ.なんかショックだなあ

里伽子:

人のこと言えるの? あたしがいなくなって,すぐにリョ-コとカップリングする
とは思わな
かった

里伽子:

(OFF) なんだかうらぎられた氣分よ,もう
岡田(OFF) え-? でも

里伽子:

のほうが美人だよ.リョ-コもそう言ってる.

里伽子:


あと
じゃ,かすん
じゃうってさ

里伽子:

(OFF) ねえ聞いてよ杜崎くん

里伽子:

ショックだと思わない? 岡田くんとは1年もつき合ったのに,別れて2か月でも
う彼女がで
きたの.それがあたしの友だちのコよ

:

え? まあそんなもんだろ

里伽子:

ね,この人もかなりク-ルよね
岡田 リョ-コにも連絡つけてあるんだけど,どうする?

里伽子:

もカレ誘って,一緖に
映畵行かな
いか? ダブルデ-トでさ,うん……

里伽子:

行きたいんだけど──お晝にパパが來てごちそうしてくれることになってるの,
ね!?
岡田 來るのがわかってから,ちゃんと計畵たてたのに,殘念だなあ.だけど

里伽子:


お母さん,
ちょっとひどいよなあ
岡田(OFF) どうせこっちで受驗するんだから,

里伽子:

だけでも置いてってくれたらよかった
のにさ
むりやりあっちに連れてくんだもんなあ……子供のこと,考えてないよ

:

何が子供のことを考えろじゃ.中學生じゃないろうが

里伽子:

(OFF) な,なによ,杜崎くん

:

まったく,くだらんちゃ.おまえもそっちの男も

岡田 彼,ぼくのことでやきもちやいてんのかな.惡かったなあ

ぼくはがっかりしていた.あの,いつも堂としていた

里伽子:

が東京では,つまらない見榮を
はってあんなバカ男とニコニコ笑ってるだけのコだったなんて.
トントン

:

(OFF) 武藤……

里伽子:

岡田くんがね,ぼくは氣にしてないからって,傳えてくれって

:

……!

里伽子:

ほんとにあの人ってバカね.つき合ってる頃はよく氣のつく優しい人だと思って
たんだけど
ふふっ…….最初は見榮はって杜崎くん呼んだんだけど,杜崎くんが歸ってふたり
きりに
なったとたん,バカバカしくなっちゃった.ほんとにくだらないわよ.彼も,あた
しも

:

(OFF) まあな,あいつに親しいのができたき,ショックながはわかる

里伽子:

わかってないわね,杜崎くん

里伽子:

(OFF) あたしがショックなのはね,岡田くんがもう全然他人みたいな感じだったこ

里伽子:

あの人,自分のことしからないの.高知はどうだ,なんて聞きもしないの.でも
もとから
ああいう人だったのよ.ようするにあたしが氣づかなかってだけ

:

へえ……

里伽子:

今夜はおばさんとこに泊まるわ.考えたらふたりでひとつの部屋に泊まるのもヘ
ンだ
し…….あした空港のカウンタ-で會いましょ

里伽子:

ひどい東京旅行になっちゃったわね

里伽子:

は,まるで30分で一氣に大人になったみたいだった.
校內 5月 晝

里伽子:

(OFF) え? 裕美,どこで買ったの
小浜

里伽子:

も買うが?

里伽子:

だって980円なら安いもん!!
連休がおわって學校が始まると─

里伽子:

は何事もなかったようにぼくを無視し─
今までどおり小浜裕美とだけは仲がよかった.
淸水 誤解せんと聞いてや
あんたのこと心配しゆうわけじゃないけんど,このままじゃとひとりぼっちになっ
てしまう
きね.まあ,わけはあるろうけんど,もうちっと……

里伽子:

放っといて!
7月 晝

:

(OFF) おまえ,期末はどうじゃった?

松野:

全然いかんかった.夏休み,大阪の豫備校行ってくる

:

ふ-ん,合宿か

松野:

氣分もかわってえいろう

松野:

なあ

:

あ?

松野:

變なこと聞くけど,怒りなよ.おまえ,連休のとき,武藤と旅行に行ったろう

:

ああ.行ったや.……どうして知っちゅうんじゃ?

松野:

どうしてち……けっこうになっちょったがぞ.おまえ,氣がつかんかったがか?

:

(OFF) 氣がつかんかった

松野:

おまえらしいな
泊りがけの旅行やゆうき,面とむこうてひやかすがはヤバイやんか.ウラでひそひ
そ言い
よったがぞ

:

あのな,どういう しなっちょったか知らんけど武藤は父親に會いに行ったばあの
ことじゃ

松野:

それは聞いた

:

聞いたって,誰に.小浜にか

松野:

小浜?

松野:

なんで小浜な.武藤本人やき

:

え?

松野:

たまたま圖書館で會うて,歸りが一緖になったき,聞いてみたら
橋の上 5月 午後

里伽子:

またその話なの!? たしかに杜崎くんと東京に行って同じホテルに一泊したわよ.
それがあな
たにどういう關係があるの!?

松野:

……おれ……
武藤のこと,好きやき……

里伽子:

……あたし……
高知もきらいだし,高知辯る男も大きらい! まるで戀愛の對象にならないし,
そんなこと
言われると,ゾッとするわ!

:

(OFF) ゾッとするちゅ言うたんか

 

 

 

 

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